高齢者を狙う個人年金保険の実態(上)~外資系生保と金融機関が談合

 テレビコマーシャルや新聞広告では高齢者をターゲットにした保険商品が盛んに宣伝されている。老後の生活設計の安定を望む高齢者に対して、巧みな宣伝文句で保険商品を勧めるものだが、最近、銀行や証券会社を販売窓口にした「個人年金保険」が急速に売上を伸ばしている。

 しかし高齢者にどれだけニーズがあるかは不透明だ。さらに高齢者に保険商品を勧めること自体について金融庁などは慎重にするよう求める指針を公表している。以下に紹介する事例はあやうく必要性を感じない年金保険商品を契約させられようとしたケースだ。

 大阪市内に住むNさん(81)は昨年12月、大手証券会社から年金についての説明をすると連絡を受け、同社の梅田支店に出かけた。そこで「情報提供に関する同意書」に署名・捺印するよう促され応じた。

 提供情報は「氏名、住所、年齢、家族構成」と「取引意向、ニーズ等に関する事項」とあった。その同意書には情報提供先の生命保険会社として国内3社、外資系3社の社名があり、外資系のM社のカ所にチェックマークが入っていた(証券会社はNさんが入れたと主張)。

 Nさんが語る。「私は80歳を過ぎているし、年金保険の必要性を感じておらず、M社の社名は聞いたこともないですよ。もし契約するとしてもリストにあった国内大手の生命保険会社の商品を選びますよ。私はチェックマークを入れた覚えはないんですよ」。

 そしてなぜかM社の社員が支店のカウンター内にいて、個人年金保険商品の説明をしようとしたので、Nさんは席を立って帰宅した。

 しかし、同意書のことが気にかかっており翌々日に、同支店に対して速達書留で同意書の返還を求めた。その日の午後、不可解な電話が自宅にかかった。名前は名乗らず「N様ですね」と念押しした上で、Nさんが同支店で投資信託、債券、外国投信などの取引をしていることや、銀行や郵便局に貯蓄があることを述べて電話を切った。

 Nさんは個人情報が完全に漏れていると感じ、同支店に調査を求めたが電話をした該当者は同社にもM社にもいないとの回答だった。Nさんはこの回答に納得していない。情報はあまりに具体的で詳細であり、一般の勧誘電話ではありえないこと、タイミングも良すぎたからだ。

 もう1つNさんが不信に思ったのはなぜ支店に訪問した際にM社の社員がカウンター内にいたかだ。しかもその社員はカウンター内を行き来し、複数の顧客に対して掛け持ちで対応していたという(証券会社はその事実は否定)。

 つまり、同意書には複数の生命保険会社名が入っていたのに、当日は明らかにM社の商品を進めることが目的だったと思われるのだ。Nさんは引き続き、証券会社に対して謝罪と事実関係を明らかにすることを申し入れている。次回ではこうした勧誘手法についての問題点を探る。 (山本ケイ)

JanJan - 2007年4月12日